東京地方裁判所 昭和56年(ワ)3359号 判決 1981年9月28日
原告 今関文男
被告 国
代理人 野崎彌純 北川博司
主文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
一、二、三 <略>
四 当裁判所の判断
1 原告の本訴請求は、結局前記損害賠償請求事件における第一審裁判所の判決中に示された、同裁判所の構成員である裁判官ら(合議体)の判断が違法であるということを前提にし、これが不法行為を構成するということに帰着するものである。
思うに裁判官の職務上の行為、従つてまた裁判についても国家賠償法の適用が当然に排除されるものではないけれども、その本質に由来する制約があることは承認しなければならないのであつて、これを民事裁判についてみるに、裁判官の判断の誤り等は、民事訴訟法の規定する上訴及び再審の手続において是正され、そのことによつて当事者の不服が解決されるべきものとしていることは、民事訴訟の制度の趣旨に照して容易にこれを肯定することができる。
2 ところで右損害賠償請求事件については、昭和五五年九月一七日に、第一審の東京地方裁判所において原告敗訴の判決がなされ、控訴審を経て(控訴棄却)、現在上告審に係属中であることは当事者間に争いがなく、同事件の第一審判決における裁判官の判断の違法を、それとは別の訴である本訴において主張するようなことは到底許されないものといわなければならない。
そうすると、その余の点について判断するまでもなく原告の本訴請求は失当であることが明らかであるからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 西理)